価格付けの基本は、原価(仕入値)より高い価格を付けることです。一般的には、製造原価(コスト)に一定の利益を加えて価格を設定するコストプラス法や、仕入値に一定の率で利益を加えるマークアップ法が用いられています。しかし、それは販売する側の一方的な提示に過ぎず、お客様に納得していただけるものかどうか分かりません。

お客様にその商品を手に取っていただくためには「価値≧価格」であると感じていただくことが必要となります。つまり、お客様にとって価格以上のお得感を感じさせることが出来て初めてその商品が売れるというわけです。

今回は、価格そのものにお得感を感じさせるための有効な価格設定法を考えてみることにします。

#1:コントラスト効果を利用してお客様の満足度をアップ!

うなぎ店でよく見かけるメニューを例に、「上」と「並」の2つから選べるメニューがあるとします。

上:2,400円

並:1,500円

このようなメニューの場合、「並」の方が選ばれやすくなります。無意識のうちに隣のものと比較してしまうコントラスト効果が影響し、「上」が比較対象となり「並」の価格にお得感を感じるようです。

次に、「松」「竹」「梅」と3つから選べるメニューとしたらどうなるでしょう。

松:3,000円

竹:2,400円

梅:1,500円

このようなメニューの場合、真ん中の「竹」が一番選ばれやすくなります。「松」と「梅」、上下の価格が比較対象となり、無難な真ん中を選んでみるという心理が働くようです。販売する側の立場で考えると、この「竹」の価格帯にイチオシ商品や利益率の高い商品を設定することで業績向上を図ることが可能となるのではないでしょうか。

しかし、ここで終わらずにもうひと工夫を入れると更に効果が上がります。

ポイントは価格差にあります。先程のメニューの価格差は、「松」と「竹」が600円であるのに対し、「竹」と「梅」が900円と、下の価格帯の価格差の方が大きくなっています。この場合、最低価格である「梅」の品質が悪いのではないかと感じたお客様が、消去法により「竹」を選ぶといったことも生じ、お店のイメージにもマイナスの影響を及ぼす可能性があるのです。

そこで、価格差に工夫を入れた次のメニューはどうでしょう。

松:3,300円

竹:2,400円

梅:1,800円

価格差は、「松」と「竹」が900円であるのに対し、「竹」と「梅」が600円と、下の価格帯の方が小さくなりました。「差が無いなら『竹』で」というお客様も増え、同じ2,400円の「竹」を選択するとしても、満足度(お得感)はこちらの方が高くなるに違いありません。

#2:端数価格効果を利用してお客様の満足度をアップ!

次にスーパーなどで見かける端数を利用する価格設定を考えてみましょう。98円、1,980円、3,980円など、端数を使った価格設定をマーケティング用語で端数価格といいます。欧米では99ドル、1ドル99セントなどのように「9」が使用されていますが、日本の場合は「8」が好まれています。

いずれも、端数を出すことで値引き後の価格を強調し、お得感を表現する方法になります。

ただし、適当に端数を作ればよいというものでなく、しっかりと効果を上げるためには法則があります。

値下げをしたこの2つの価格、どちらの方が安くなったと感じるでしょうか?

①1,900円 ⇒ 1,680円

②2,200円 ⇒ 1,980円

どちらも金額は220円の値引きですが、多くが②に安さを感じるのではないかと思います。端数により値引き感を表現しているのはどちらも同じですが、②は最大の位の数字を繰り下げています。それが値引き感を大きく感じさせているわけです。

また、0以外の数字を3個以内に抑えることも効果を上げるポイントとなります。

①33,000円 ⇒ 29,980円

②22,000円 ⇒ 19,800円

どちらも法則に従って「9」を使用し繰り下がりを行っていますが、②に安さを感じると思います。①の場合、5桁の数字のうち「1」から「9」の実数を4個使用していることで、値引きのインパクトを薄めてしまっているのです。

いかがでしょうか。マーケティング戦略の一つとして値引きを行っているわけですから、最大限の効果を引き出したいものですよね。

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執筆者:取材の匠 ライター 海老沼優文

中小企業診断士

葛飾生まれ、葛飾育ち。早稲田大学商学部卒。事務用品メーカー在籍中はオフィス家具営業として主に官公庁に対する営業活動に従事、新規開拓を含めた営業ノウハウを磨く。現在は地元葛飾で、家業の文具事務用品販売会社を経営する傍ら、創業塾講師や地域創業アドバイザー、葛飾区立図書館ビジネス相談員など、創業支援に注力した活動を行っている。