『お客様は神様です』
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という三波春夫さんの言葉に代表されるように、お客様の方を向いて、お客様が望んでいるものをいかに提供できるかがビジネスを行う上で重要であるとされてきました。しかしながら、『顧客目線で』とはいうものの、言葉だけがひとり歩きをしてしまい、実態が伴っていない現状を目のあたりにすることもよくあります。自分自身が勤めている飲食店に顧客として行ってみて初めてさまざまな不備に気づいた、という話もちらほら聞きます。このように、お客様の目線に立っているつもりでも実は立てていなかったりすることが往々にしてあるものなのです。
カスタマージャーニーマップを作ってみよう
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では、どうすればお客様の目線に立てるのでしょうか?先に申し上げた飲食店のように毎回顧客として訪問しても、同じところに目がつくだけです。そこで役に立つのが、実際に顧客目線に立つシミュレーションをしてみることです。具体的には、
『カスタマージャーニーマップ』
という道具を使います。仰々しい名前ですが、模造紙ぐらいの大きさの紙に、お客様が自社の提供しているサービスを体験する前から体験しているとき、そして体験したあとまでの時間軸(プロセス)と、「プラスの感情(ポジティブ経験)」と「マイナスの感情(ネガティブ経験)」を書き入れたものです。
こちらは、主な対象顧客を女子高生とした場合の、あるカフェのカスマージャーニーマップです。学校にいるとき、移動中、店内の入口での様子、コーヒーを受け取るまでの待ち時間、受け取ったあとテーブルに運ぶまで、コーヒーを飲んでいる間、片付けているとき、店を出るとき、店を出たあと・・・それぞれのプロセスのポジティブな感情とネガティブな感情をできるだけ多く書き出します。一番自社のサービスを使ってくれそうなお客様の層にあたる方、あるいはその属性に近い友人にインタビューをしてみて記入してみると良いでしょう。また、ご自身が顧客になりうる場合は、客観的に見てどうかを考えながらマップを作ってみてください。
カスタマージャーニーマップをもとに、改善策を考えよう
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ポジティブな感情とネガティブな感情を書き出し終わったら、一旦俯瞰してみて、それぞれのプロセスでどのような改善策があるかを考えて書いていきます。良いところは活かしつつ、悪いところは改善できる方法を考えるのです。もちろん、「本当に実行できる改善策か」もあわせて考えます。一旦書き終えたら、どなたかに見てもらって改善点を指摘してもらうと良いでしょう。それによってさらに精度の高い改善策を考えることができます。
実は、このようにしてカスタマージャーニーマップを作り上げていくことこそが、顧客の目線に立つことにほかならないのです。完成したカスタマージャーニーマップには、お客様が自社のサービスを受ける前、受けているとき、受けたあとでそれぞれどのような感情を持っていて、どうすればもっと良くなるかについて必死で考えた内容がかかれているはずです。それがお客様のインタビューから得られたものでも、自分自身で考えたものでも、お客様の目線に立ったものであることには変わりがありません。
このように、自社の提供サービスを時間軸で分けて、お客様のポジティブな感情とネガティブな感情を書き出していくことで、自然とお客様の目線に立って考えることができるようになります。ぜひ一度やってみてください。
なお、カスタマージャーニーマップは、スタンフォード大学で現在の形に体系化されたデザイン思考という手法の中の一部分を切り取ったもので、今回ご紹介したものの他にもたくさんのマップが存在します。もしご興味のある方は、「カスタマージャーニー」と検索してみてくださいね。
執筆者:取材の学校 ライター 中小企業診断士 堀江 賢一
1977年生まれ。福岡県育ち。九州大学大学院理学府修了。中小企業診断士、ファイナンシャルプランナー(AFP)。
大手電機メーカーにてグローバルSCMプロジェクトやインターネットコンテンツ配信システムの販売、事業部改革プロジェクトなどに携わる。システム開発、販売、組織改革と、企業組織活動のあらゆる面を経験。その後コンサルティング企業を経て、現在はインターネット企業で、クラウドの事業戦略やマーケティング戦略の立案と実行に尽力している。戦略と実行計画の立案、プロジェクト推進が得意。
趣味はアカペラとテニス。友人と5人でアカペラユニットを組んでおり、結婚式などで歌を披露している。全日本テニスランキング保持者。