最近、テレビのコマーシャルなどで「クラウド」というキーワードを聞くことも珍しくなくなってきました。さまざまな検索シーンを演出するGoogleや「グラブってる?」のキーワードで話題のソーシャルゲームやニュースアプリなど、「クラウド」という言葉を使わなくてもこれらのサービスはすべてクラウドを活用して実現されています。一方、テレビのコマーシャルにはあまり出てきませんが、企業で活用されるクラウドも増えてきています。
このように、数年前にはその言葉すら知られていなかった「クラウド」が、現在は私達の周りにあふれているのです。私は中小企業においても、むしろ中小企業だからこそクラウドを最大限活用すべきであると考えています。その理由は、
『投資リスクを最小限に抑えることができるから』
です。もちろん、現在の安定稼働しているシステムをクラウドに乗り換えるほうがハイリスクであると考える方も多いのも事実です。さらに、セキュリティリスクをどう考えるかなどの課題もあります。それでも私はクラウドの最大活用をお勧めしたいと思います。なぜそこまで推すのか、についてこれからご説明しましょう。
クラウドを活用した時の効果は?
#クラウドを活用したときの効果その1。
それは、「すぐに始められすぐに止めることができ、経営環境変化のスピードに対応できる」ことです。総務省によると10年前に比べて私達を取り巻く情報量は600倍近くになってきています。それに伴い、消費者が取る行動パターンも10年前に比べて膨大になってきています。消費者の行動パターンや需要を予測し、それに対応した設備投資を行ってきたのが今までだったのですが、現在は設備投資が終わらないうちに別の消費行動の波がおこる時代。今までの投資計画ではスピードが追いつかなくなってきているのです。そこで、基本月額払いで使った分だけの出費で済み、事業を始めるときにすぐに使って、やめたいときにすぐ止めることができるクラウドを活用し、設備投資そのものをクラウドの活用に切り替える企業が増えてきているのです。
#クラウドを活用したときの効果その2。
それはセキュリティリスクの低下です。インターネット上にあるシステムはセキュリティに晒されるじゃないか、と思われるかもしれません。しかし、企業のシステムがインターネットに接続できるのが当たり前になっている昨今、どの会社のシステムも常にインターネット上からの攻撃にさらされているのです。その攻撃への対策を、何千台何万台を管理しているプロが行うか、自社のエンジニアが行うかの違いでしかありません。そう考えると、クラウドのほうが安心であるように感じませんか?
#クラウドを活用したときの効果その3。
それは情報システム管理担当を事業部門に任せることができることです。クラウドは一般的に、会計や人事給与、営業管理、販売管理などの「機能」をインターネット側から提供します。つまり、機能の裏でどのようにサーバやネットワークが動いているかを利用者に意識させることはありません。サーバやネットワークの部分はクラウドを提供するプロであるクラウドベンダがきっちり管理をしてくれるからですね。ですから、情報システムの管理業務自体、事業部門の担当者でも十分にその役割を担うことができるようになります。そして、今までの情報システム管理担当者は、より経営に役立つ情報システムの活用に頭を使うことができるようになるのです。
今後どんどん増えるクラウドサービス。どんなクラウドがあるのか?
クラウドを活用するメリットはわかっても、実際に何を使っていいかわかりませんよね。ここでは企業活動のさまざまなシーンで利用できるクラウドを紹介してみようと思います。
- メール、社内チャット、施設予約などの情報系と呼ばれるシステムは
- Microsoftの「Office365」や
- Googleの「G Suite (Google Apps for works)」などがあります。
- 営業プロセス管理、顧客とのやり取り管理に用いられる営業系システム、一般的にCRMやSFAと呼ばれるシステムは
- Microsoft Dynamics CRM や
- Salesforce Sales Cloud などが有名です。
- さらにCRM(顧客管理システム)へ名刺情報を登録、管理できるシステムとして
- Sansan株式会社 の「クラウド名刺管理」
- Salesforce CRMと連携する名刺管理「SmartVisca」などが有名です。
- また、財務・会計、経費精算、請求管理など経理系システムは
- TKC全国会の「FX4クラウド」
- Concer社の「コンカー」
- クラウドペイメント社の「経理のミカタ」
- 勤怠管理、経費精算、工数管理が一体化した「Teamspirit」などがあります。
- また、企業に必ず必要となる売上・販売管理システムは
- OBCの「商奉行」 や
- Salesforce Sales Cloudと連携する「ウランバ!!」などがります。
上記でご紹介した「Teamspirit」「SmartVisca」「ウランバ!!」は、SalesforceのCRM機能、SFA機能と連携できます。こういった、いろいろなアプリケーションどうしが容易に連携できるシステムはエコシステムと呼ばれています。Salesforceを導入すると、ユーザは自社に必要なアプリケーションがチョイスでき、そういう意味では、Salesforceは一歩進んだクラウドシステムと言えるかと思います。
このようにさまざまなクラウドサービスが世の中には溢れてきています。そのため、選ぶのも大変なのですが、現在のクラウドサービスは、Webブラウザからサービスのページに行けば大体が無料トライアルを用意しています。まずはトライアルで使ってみて、導入可否を決めてみても良いでしょう。このように無料(あるいはとても安価で)短期間でも使うことができるのがクラウドの良さなのです。ぜひクラウドの導入を検討し、効率的な経営に役立てていただければと思います。
執筆者:取材の学校 ライター 中小企業診断士 堀江 賢一
1977年生まれ。福岡県育ち。九州大学大学院理学府修了。中小企業診断士、ファイナンシャルプランナー(AFP)。
大手電機メーカーにてグローバルSCMプロジェクトやインターネットコンテンツ配信システムの販売、事業部改革プロジェクトなどに携わる。システム開発、販売、組織改革と、企業組織活動のあらゆる面を経験。その後コンサルティング企業を経て、現在はインターネット企業で、クラウドの事業戦略やマーケティング戦略の立案と実行に尽力している。戦略と実行計画の立案、プロジェクト推進が得意。
趣味はアカペラとテニス。友人と5人でアカペラユニットを組んでおり、結婚式などで歌を披露している。全日本テニスランキング保持者。