「ファイナンス理論」というと、お金儲けのための理論だと思われるかもしれません。また、高等数学を駆使して難しい学問だというイメージを持たれる方もいるかもしれません。
むろん、そうした側面が全くないとは言いません。しかし、ファイナンス理論のエッセンスはそうしたものとは別なことです。そしてそれを理解することは、経営について巷間言われていることに根拠を与えてくれます。

 

#1 リスクとリターン

「リスク」を危険の意味でとらえる人が多いですが、それは違います。本来の意味は「振れ幅」「不確実性」です。

たとえば、100円を投資した場合「ゼロになるかもしれないが、200円になるかもしれない」と「90円になるかもしれないが110円になるかもしれない」という二つの選択がある場合、前者を「リスクが高い」と言います。
ここからわかることは「リスクを取らないとリターンは得られない」ということです。ノーリスクでリターンが得られるかのような「儲け話」が巷ではささやかれます。こうした詐欺まがいの話は後を絶ちません。経営者であれば普通の人以上にそうした話を持ち込まれる機会も多くなってしまうでしょう。しかし、「うまい話」はあり得ません。リターンを得るためにはリスクを取る必要が必ずあります。

もちろん、成長や利益というリターンを得るためにも先行投資などのリスクを取る必要があります。失敗した場合にどこまでの損失ならば耐えられるかを冷静に分析したうえでリスクを取っていく姿勢が何より大事です。

#2 リスク分散

リターンを必要以上に減らすことなしにリスクを下げる方法はあります。それが「リスク分散」です。これはリスクを取る先を複数にすることです。
その際の原則は二つだけになります。ひとつは、なるべく相関の弱い組み合わせにする。もうひとつは、できるだけ多くのものを組み合わせる、です。

相関が弱い組み合わせとは、片方がうまくいかなかったときに、もう片方がそれを補ってくれる関係になります。たとえば、円高になると利益が出る傾向にある事案A、円安になると利益ができる傾向にある事案B、このふたつを組み合わせれば、円高になっても円安になっても、補い合って利益を確保することができるでしょう。
むろん、ふたつだけでは、プラスマイナスゼロになる可能性が高いですから、他の組み合わせも考えて、できるだけ多くのものを組み合わせるほうがいいことになります。

この考えは人材活用の面でも活かすことができます。同じような人材ばかりを集めてしまうと、ある局面では強さを発揮できても違う局面が来ると対処できないことも起こりえます。多様な人材を登用することで、さまざまな場面で誰かが力を発揮して対処していくことができるでしょう。ダイバーシティは、リスク分散の視点からもやるべき施策なのです。

#3 現在価値と将来価値

「今すぐもらえる1万円と来年もらえる1万円とはどちらが価値が高いか」
と聞かれたらどう答えますか。多くの人は「今すぐ」と答えるのではないでしょうか。
それは当然のことだと思います。1万円もらって銀行に預ければ利子がつきます(最近の金利は低いですがゼロではありません)。また、来年確実にもらえる保証も実はありません。1年待つことの対価、不確かさに対する対価が上乗せされないと、つり合いはとれません。

つまり、何の条件もなければ現在価値が一番高いことになります。ですから決断はすぐにするほうが価値は高いのです。先送りをすればするほど、待つことの対価を払うことになります。
決断と書くと何か新しいことをするのを決める、ととらえられるかもしれませんがそうではありません。「やらない」と決めることも決断です。一番悪いのは、やる、やらない、を決めずに先送りすることです。

またその際、考慮しておかなくてはいけないことに「埋没費用(サンクコスト)」という考え方があります。現在より以前に使われた費用のことですが、これに価値に一切の影響を与えません。

たとえば、いままで1千万円をつぎ込んだ事案Cがあるとします。しかしこの事案、どうやらものになりそうにない。利益を生みそうにないとわかってきました。この場合、いままでいくら使ってきたかにかかわらず、「止める」との決断が必要になります。ところが多くの人は「1千万もつぎ込んだのにもったいない」と思ってしまう。つまりつぎ込んできた1千万に価値を見てしまいます。しかしこれは幻想です。過ぎ去ってしまったことに意思決定を左右されてはいけません。サンクコストの概念を知っていると、決断を曇らせるような考えを排除することができます。

以上、簡単にファイナンス理論のエッセンスと経営の関係について書いてきました。難しい理屈は必要ありません。ウランバで管理している売り上げを、より有効に活かす決断をしていくために、ファイナンス理論のエッセンスを取り入れてみてはいかがでしょうか。

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執筆者:取材の学校 ライター 中小企業診断士 中郡 久雄

1965年生まれ。明治大学政治経済学部経済学科卒業。中小企業診断士、和田式陽転エデュケーター。
新卒で入社した総合建設業(ゼネコン)を皮切りに、宿泊施設の営業職、旅行企画販売、人材派遣業などを経験し、現在は中堅印刷会社の経理担当。通常の経理業務のほか、基幹システムの再構築や管理会計全般に携わる。モットーは「経理とは経営管理である」。
社外活動では、経営者インタビューを中心に執筆活動に力を入れている。経営者の想いを言葉に変えて、想いが広く伝わるような記事を心掛けている。
最近の趣味は、ライブに行くこと。音楽・芝居は無論、映画もDVDではなく映画館で見るように努めている。