損益分岐点とはその名の通り、損(赤字)になるか、益(黒字)になるかの分岐点です。売上高、販売数量が損益分岐点を超えると利益が出ます。このような意味は分かっていても、どのように活用するか分からない方もおられることでしょう。損益分岐点の考え方をより理解して、ビジネスに活かしましょう。

#1: どんな事業も固定費をまかなうことが最初のミッション

 

損益分岐点では利益が0なので、費用と売上高が同じになります。売上高の前にまず費用について考えましょう。費用は、固定費と変動費の2種類に分けることができます。固定費とは、稼働の度合いや売上高の変動にかかわらず固定的に発生するコストです。毎月支払う家賃、月給、毎月計上する減価償却費などです。変動費とは、稼働の度合いや売上高の増減によって変動するコストです。原材料や商品を仕入れる費用、外注費などです。

仮に固定費を0とすると、損益分岐点は0になります。なぜなら、売上高や販売数量が0でも、赤字にならず、利益が0になるからです。実際は商品やサービスをお客様に提供する上で、原材料や商品を仕入れる必要がありますので、損益分岐点が0になることはないですが、固定費が発生するため利益をあげないといけないのです。固定費をまかなうことがビジネスを行う上で最初のミッションになります。

ただ、固定費分の売上高をあげれば、利益が0になるということではありません。先述のように、商品やサービスを提供するためには、原材料や商品の仕入れなどにより、稼働の度合いや売上に伴って変動費が発生します。固定費と変動費を合わせた総費用をまかなう売上高、販売数量が損益分岐点なのです。

 

では、こんな場合を考えてみましょう。

1個100円の商品を販売したときに60円の利益(変動費40円)があり、固定費が6万円だった場合、利益を0にするためにいくらの売上高、販売数量が必要かを考えてみます。このとき、1,000個の商品を販売すると固定費の6万円をまかなうことができます(固定費60,000円÷1個当たりの利益60円=1,000個)。このときの売上高は10万円になります(販売単価100円×販売個数1,000個=100,000円)。

 

この例から分かるように、損益分岐点を考える上で、大切なことは2つだけです。

・固定費はいくらか

・商品やサービスを1つ販売したときの利益はいくらか

 

実際は複数の商品やサービスを扱ったり、在庫を抱えたりしますので、こんなに単純ではありませんが、この2つが分かれば損益分岐点の概算ができます。

 

#2:利益ゼロの売上高、販売数量を知る以外の活用方法

 

損益分岐点は低いほうが赤字になりにくいので、損益分岐点を下げることが重要です。損益分岐点を下げるための方策として、固定費の削減、商品やサービスを1つ販売したときの利益増加が考えられます。商品やサービスを1つ販売したときの利益を増加させるためには、変動費の削減、高付加価値の商品やサービスの提供が考えられます。固定費と変動費、お客様に提供できる価値を常日頃から見直す必要があることも損益分岐点の考え方から読み取れます。

 

また前述の例で、利益を0にするだけではなく3万円の利益をあげたい場合を考えてみます。このとき、1個販売して60円の利益がある商品をいくら販売すると、固定費の6万円に加え、利益3万円もまかなえるかを考えます。すると1,500個販売する必要があることになります(固定費と目標利益の合計90,000円÷1個当たりの利益60円=1,500個)。このときの売上高は15万円になります(販売単価100円×販売個数1,500個=150,000円)。このように損益分岐点の考え方は、販売目標を設定するときにも活用できるのです。

 

さらに、現在の売上高、販売数量が損益分岐点をどれくらい上回っているか、下回っているかを見ることで、経営状況も見えてきます。ギリギリ黒字または赤字なのか、余裕のある黒字なのか、現状を把握することにも役立つのです。

 

販売管理クラウドサービス「ウランバ!!」では、販売目標とその実績を管理することができます。損益分岐点の考え方をより理解して、ビジネスに活かしていきましょう。

 

 

執筆者:取材の匠 ライター 梅津勝明

1972年生まれ。大阪大学基礎工学部物性物理工学科卒業。中小企業診断士。

誰もが志を持ちやすく育みやすい社会の実現を目指して活動している。中小企業診断士として、経営理念作成支援、事業計画作成支援、組織改善支援、起業家教育、中小企業診断士受験生支援、取材執筆等を行う。また、影絵師として、小学校や保育所等で影絵劇ワークショップを開催し、自分で感じ自分で考えることの大切さを伝えている。