外注を活用していますか?需要の変動が激しいとき、自社内の生産設備能力や人員に余裕がないとき、不効率な業務であるときなど、有効に外注を活用することは、自社の少ない経営資源で、売上を伸ばし業績を拡大するために、とても重要な方法です。

そこで今回は、外注の活用を検討する際、内製コストと外注コストを正しく比較する方法をご紹介します。事例を簡略化するため、自社内の十分な生産能力と信頼できる外注先があることを前提とします。

#1:事例で確認してみましょう。

 

事例:商品A 1個あたりの内製コストが100円、外注コストが80円の場合、あなたなら外注しますか?

 

外注コストの方が安いため外注しよう、と判断したくなりますが。ちょっと待ってください。このコストの比較は正しいのでしょうか?

これを確かめるには、内製コストの内訳が必要になります。詳細な内訳がつかめていればより精度が高い比較になりますが、そこまでできてはいなくても、変動費と固定費を何とか把握していれば大丈夫です。

例えば、内製コストの内訳は以下の通りとします。簡略化していますが、納品場所が同じであるなど条件は揃っている前提です。また、外注コストは、調達価格が1個80円であり変動費とします。

 

内製コスト内訳

変動費 60円 = 材料費 50円 + 物流費 10円

固定費 40円 = 人件費 30円 + 償却費 10円

内製コスト合計 100円 = 変動費 60円 + 固定費 40円

 

変動費はこの商品Aの生産量に比例してかかるコストです、言い換えると、生産しなければ発生しません。一方、固定費は、この生産量の大小にかかわらず発生します。

そこで、「この商品Aを生産、もしくは調達することによって」発生するコストを考えてみると、内製の場合、変動費の60円、外注の場合、調達価格の80円となり、内製の方が外注よりコストが小さいことがわかります。よって、この事例の場合は内製の方が有利となります。

 

#2:比較する目的にあったコストのみで比較する。

 

事例の冒頭で、単純に内製と外注のコストを比較した場合と結論が変わってしまいました。それは、固定費が存在するからです。固定費は、内製しても外注しても発生するため、この場合コストを比較する際に、考慮してはいけないのです。比較の目的が、内製と外注なら、「この商品Aを生産、もしくは調達することによって」発生するコストのみを選定し比較すればよいのです。

このような固定費を含む比較は、とても間違いやすいと言えます。内製コストや外注コストがそれぞれ間違っているわけではありませんが、比較するコストが目的にあっていないと間違いが起こってしまいます。収益を改善しようと思って判断したにもかかわらず、収益を悪化させる結果になってしまっては本末転倒ですね。

今回ご紹介した事例では、内製の変動費が外注コストの80円より高い場合に、外注のコストメリットがあります。もちろん、自社内の生産能力が不足して外注を活用する場合もありますので、その場合は、コスト比較だけでは判断できませんのでご注意を。

これで生産の体制は整いました。後はしっかりお客様の需要にお応えすれば、売上につながります。販売管理には「ウランバ!!」で。

 

執筆者:取材の匠 ライター 木下岳之

中小企業診断士 AFP(日本AP協会認定)

1970年生まれ。大学卒業後、電機や素材メーカーに勤務。経営企画や事業管理に従事。素材・部品から完成品までの製造・販売に関する業務を担当。国内工場や海外駐在などを経験。現在は、事業計画策定・管理、生産関連、販売促進、海外推進分野を中心に、コンサルティングや執筆の活動中。