原材料を調達し、商品をお客様の元へ届けるために無くてはならないものの一つに “物流”があります。“物流”といえば、大手インターネット販売業者の台頭や大手配送会社の賃金未払い問題、サービス料金値上げなど、近頃では話題に事欠かないですね。ところで、皆さんが事業を行う中で物流については必要経費だから仕方がないと、毎月どれだけのコストがかかっているか細かくは把握していない場合も多いのではないでしょうか?今回は、輸送や在庫活動などにかかる費用である“物流コスト”について考えてみたいと思います。
#1: そもそも“物流コスト”とは?
物流というと、まず思い浮かべるのが、船やトラックなどによる「輸配送」があります。これが物流のメインの活動ですね。その他にも、荷物の積み降ろしなどの作業である「荷役」、原材料や商品などを一定期間倉庫などに置いておく「保管」や、荷物を保護する「包装」、包装したり値札を貼ったりといった「流通加工」、また「在庫管理」や「受発注処理」も物流に含まれます。
“物流コスト”というと、輸配送業者や倉庫の利用料金、包装を外部委託した場合に外部に支払うコストである「支払い物流コスト」とイコールだと考えがちです。しかし、実際には社内の人件費や製造原価などに埋もれてしまっている「自家物流コスト」も物流コストに含まれます。これらをできるだけ正確に把握することで、真のコストを把握することにつながります。
#2: 物流ABCで物流コストを分析してみよう
物流コストを定量的に把握する手法として「物流ABC」というものがあります。ABCはActivity Based Costingの略で、物流においてコストを発生させる活動(Activity)ごとに費用を集計して、活動ごとの原価を計算します。具体的には、保管にかかるスペースの割合や作業にかかった時間単位、処理回数や伝票の枚数によって間接費の配分を行います。
例えば、月間の総人件費が200万円、総作業時間が10,000分として、このうち200分を梱包作業に要し、500個の梱包作業を行った場合、
梱包作業という活動にかかった原価は 2,000,000円÷10,000分×200分=40,000円
そして、1個あたりの梱包作業にかかる単価は 40,000円÷500個=80円
と計算できます。
こうして活動ごとのコストを分析することで、どの活動にいくらかかっているのかを見える化することで、現場における無駄の発見や、物流の効率化に向けた改善に繋げることができます。さらに、品目別や得意先別に集計することで、販売管理とあわせて顧客別の採算を分析することも可能となります。
物流においては、頻度を高めて小口で配送すれば配送コストが上がる、商品の販売機会を逃さないように在庫を多く持っておけば倉庫代などの在庫コストが上がる、などトレードオフの関係が存在します。顧客へのサービスと物流コストのバランスを調整して戦略を練る必要がありますね。そのためにも物流ABCのような手法を用いて真のコストの把握が重要となってきます。
物流ABCを用いたコスト管理と「ウランバ!!」を用いた販売管理の合わせ技で、利益の向上を目指しましょう!
執筆者:取材の匠 ライター 荒井由紀子
神奈川県横浜市出身。中小企業診断士。二児の母。早稲田大学理工学研究科修士課程修了後、国内製薬会社に入社。臨床開発モニター、臨床開発プロジェクトマネジメントに携わる。産休・育休取得を経て職場復帰したのち育児に専念するため退職。専業主婦となる。その後次男の幼稚園入園を機に中小企業診断士として独立。現在は会社員時代の経験をベースに、子育てという精神修行の世界に没頭した経験から得られた視点を活かし、セミナーや執筆、経営コンサルティングを行なっている。