マーケティングのテーマとして、「カスタマージャーニー」というキーワードを最近目にするという方もいらっしゃるのではないでしょうか。このカスタマージャーニーは、「顧客が商品、サービスを認知してから購入、利用するまでの全体的なプロセス」を旅になぞらえた表現であり、現在、多くの企業で利用されているマーケティングの考え方です。

「そんな考え方しなくても、会社のお客様のことは、自分が一番分かっているよ」という方もいらっしゃるかもしれませんが、近年、IoTの進化、PC、スマートフォン、タブレットなど様々なデバイスの多様化、海外観光客の増加など、企業が考慮すべき環境は複雑化し、その全体像を一人で把握するのは極めて困難といえるでしょう。このように複雑化している社会において、顧客の行動を捉え、マーケティングの成果を全体的に俯瞰し、改善するために役立つのが「カスタマージャーニー」という考え方であり、取り入れることにより、2つのメリットにつながっていきます。

#1:【メリット その1】 タッチポイントにおける顧客ニーズの理解が深まる

 

カスタマージャーニーの理解が進めば、様々なタッチポイントでの顧客視点の理解につながり、顧客視点に立った考え方ができ、企業側からの一方通行になりがちな取り組みも、顧客視点を常に意識した施策にしていけるようになります。

例えば、店舗看板、Webサイトや、DM、チラシ、店舗での接客、など、個別検討していたような取組も、お客様が求めるものはどんなものなのか、顧客視点を軸とした全体最適につないでいくことができます。

 

#2:【メリット その2】 社内での認識共有により全体最適化が図れる

 

カスタマージャーニーは一人で理解を深めるだけではなく、広く関係者に共有することが重要です。全社的に共有することで、営業担当や販促担当、販売担当など、様々なポジションの社員が、全ての顧客接点を意識し、全体最適を図る意識の醸成もつながります。各社員が担当する顧客接点も、前後の接点と連携するなど、さらなる改善にもつながります。

 

このカスタマージャーニーを、顧客の行動や心理のプロセスに合わせ時系列にマップ化したものを「カスタマージャーニーマップ」と言います。では、このカスタマージャーニーマップ、どのようにまとめていけばいいのでしょうか。

 

#3:カスタマージャーニーマップをまとめてみよう!

 

専門会社に依頼し、制作することもありますが、専門家でなくてもまとめることが可能です。一般的には、様々なポジションの社員を集め、共同で検討していきます。その検討において、顧客の行動を時系列にステップ化して、そのステップ別に、その行動や心理について、一覧化していくものが、カスタマージャーニーマップとなります。以下のようにまとめていくことができます。

 

(1)顧客行動とその時の顧客の思考・感情の情報収集

行動、思考、感情といった情報は、各担当者の業務経験からの情報収集でかまいません。

 

(2)各行動における課題のディスカッション

続いて、集めた情報を整理しながら、顧客行動やその時々の思考、感情について、どういった課題を顧客が抱えているのか議論・検討します。

 

(3)接点と顧客行動、思考、感情のマップ化

最後に、議論した課題を意識した上で各行動に対し、どんな接点(店舗、媒体、接客など)を設け、顧客課題を解決すべきか整理して、紙に落とし込んでいきます。

 

カスタマージャーニーマップを作るポイントとして、まずはシンプルに作り、その後、実際に顧客へのインタビューを反映しブラッシュアップするような、段階的なプロセスをお勧めします。

カスタマージャーニーマップを用い、全体を俯瞰することで、これまで意識していなかった接点や、強化すべき接点、さらに、その時々の顧客の思考や感情について、きちんと意識した施策を検討することができるようになります。

このように、カスタマージャーニーは、企業が取り組むべき施策に対し、「選択と集中」を図ることで、「生産性向上」にもつなぐこともできるのです。生産性向上にも役立つ販売管理は「ウランバ!!」で。

 

 

 

 

執筆者:取材の匠 ライター 錦織芳樹

中小企業診断士

1979年生まれ。千葉県出身。明治大学法学部卒業。現在は、航空運輸業企業内でECサイトの企画・デザインを担当。Web/モバイルサイト、SNSなどを中心にインターネット、デジタル全般のサービス企画に従事。現在はデジタルマーケティングを主なテーマとして、執筆、経営コンサルティングにも携わる。