近頃、一億総活躍社会や働き方改革という話題につきませんが、それに関係して「健康経営」が注目され推進されていることをご存知でしょうか。「健康」と「経営」というつながりが、なにか不思議な感じがしますが、経済産業省によると「健康経営とは従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する経営手法のこと」とされています。従業員の健康管理を通して、従業員個々の活力向上や生産性が向上すると、組織全体も活性化され、業績向上や組織の価値向上が期待できるということなのです。それでは、今なぜ、健康経営が注目されているのでしょうか?

日本で健康経営が求められる背景には、日本の抱える構造的な課題があります。その背景の一つ目が、生産年齢の人口減少と従業員の高齢化です。人口減少と高齢化により、従業員ひとりひとりの役割が重要となる一方で、高齢化による生活習慣病は増加傾向であり、従業員の健康状態に留意することが求められています。二つ目の背景は、人手不足の問題です。現在、多くの業種では人手が不足している状況で、さらに有効求人倍率も高水準となっており、特に中小企業では必要な人材や計画していた人員を確保しにくくなっています。また、結婚や出産による退職といった人材が失われることにも注意を払わなければなりません。健康経営は、従業員の健康維持・増進に取り組み、職場環境を働きやすくすることで、従業員の定着率アップと新たな人材の確保へとつながっていくのです。そして三つ目の背景は、国民医療費の増加です。厚生労働省によると、国民医療費は増加傾向を続けており、2015年の国民医療費は1990年のほぼ倍に増加している状況です。国民医療費の増加は、国民皆保険制度の維持に大きな影響を与えるばかりでなく、企業の経営にも影響を与えます。つまり、従業員の健康保険料の半分は企業が負担しており、健康保険料の上昇は人件費増につながるのです。

 

#1:健康経営を推進する政策や仕組み

現在、健康経営を推進する政策や仕組みが整ってきています。いくつか例を挙げますと、日本政策投資銀行(DBJ)の「DBJ健康経営格付」融資、厚生労働省の「健康寿命をのばそう!アワード」、経済産業省と東京証券取引所の選定による「健康経営銘柄」、日本健康会議の認定(制度設計は経済産業省)による「健康経営優良法人認定制度」といったものがあります。「DBJ健康経営格付」は独自評価システムにより従業員の健康配慮に優れた企業に対し、評価に応じて融資条件を決定するというものです。「健康経営銘柄」は、対象を上場企業として、経営戦略に従業員の健康管理に取り組む企業を認定・表彰しています。銘柄に認定されることは、企業のブランド力を高めるとともに、投資家から評価を得やすく、株価に好影響を与えることができます。「健康経営優良法人認定制度」には対象を中小企業にしたものもあります。

 

#2:健康経営に取り組み方について

では、実際、健康経営にはどのように取り組めばよいのでしょうか?「健康経営銘柄」には選定基準として5つのフレームワークと評価項目があります。その5つのフレームワークに合わせて行動することで、健康経営を効果的に推進していくことができます。その5つのフレームワークとは①経営理念・方針、②組織体制、③制度・施策実行、④評価・改善、⑤法令順守・リスクマネジメントとなります。「健康経営優良法人認定制度」なども評価項目が5つのフレームワークに基づき設定されており、何を行えばよいか、どう活動すればよいかが明示されています。さらに、健康経営銘柄について、選定企業紹介レポートが公表されており、選定された企業がどのような活動をしてきたか確認できますので、健康経営を行ううえでの参考になります。健康経営で人材の活性化を図り、さらに「ウランバ!!」の活用すれば、企業の経営をスムーズにして安定化させることが期待できます。

 

執筆者:取材の匠 ライター 岩本英二

印刷会社にて営業を担当したのち、企画制作部門にて情報誌やセールス・プロモーションの企画・制作のディレクターとして業務に携わる。さらに自社の製品やサービス販売のため、BtoBマーケティングに取り組み、現在は経営企画に従事している。中小企業診断士、AFP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)