―導入
社会人になると多くの場合プレゼンテーション(プレゼン)をする場に直面します。プレゼンの機会が学生時代に少なかったという新入社員達は戸惑う事でしょう。また、新入社員ではないがプレゼンに苦手意識を持っている社員も多くいるようです。
「何を言っているのかわからない」「資料は綺麗だけど・・」と言われた事はありませんか?
今回は、はじめてプレゼンに直面する新入社員にも、プレゼンに苦手意識を持つ方にも解りやすくプレゼンテーションスキルを向上させる方法をご紹介します。
1.プレゼンテーションとは何か?
Wikipediaによるとプレゼンテーション (presentation) とは、『情報伝達手段の一種で、聴衆に対して情報を提示し、理解・納得を得る行為を指す(宣伝等)。略してプレゼンとも呼称される』とされています。(引用:Wikipedia)
プレゼンとは「自分が伝えたい事をパワーポイントに羅列してプロジェクターに映す」ことではありません。Wikipediaにある「相手が理解して納得を得る」という部分が重要です。
身近に起きたプレゼンの悪い例をご紹介します。少し特殊なプリンターが欲しかったのでインターネットで検索して、良さそうな会社さんから詳細の説明してもらう事にしました。こちら側の課題を事前に共有させてもらっていたので、「課題に対してやりたい事がどのように実現できるのか?」という事を想像しながらプレゼンを聞こうとしていました。
しかし、担当者からはプリンターの印刷速度やCPU、高画質、新しいセンサーの詳細など、「このプリンターがいかに素晴らしいか」という事を伝えようとしていました。確かにプリンターの性能の情報は必要ですが、カタログを見れば書いてあることですのでプレゼンの多くの時間をそちら側に裂くべきではありません。
プレゼンをする相手(聞き手)は何を求めているのかを知らないままプレゼンを実施すると、自己満足に終わってしまう可能性があります。
聞き手のやりたい事は何か?プレゼンに何を求められているのか?何を持って帰りたいのか?このようなところを想定する必要があります。つまりプレゼンとはプレゼンをする当日ではなく、プレゼンの依頼を受けた日からがプレゼンのスタートなのです。
2.プレゼンテーションに必要なロジックとは?
プレゼンテーションは一度身に着けてしまうと多くの場所で汎用的に使えます。新商品の顧客への説明、上司への進捗報告、チーム内の情報共有などビジネスの場だけではなく、結婚式のスピーチなどプライベートの場でも使えます。プレゼンテーションをする際に意識すべきロジックをご紹介します。
1)話のゴールを設定する
プレゼンをする依頼を受けたらいきなりパワーポイントを開いてキーボードを打ち始めたらいけません。まず、このプレゼンは何かゴールを明確にすることが重要です。聞き手に何を知ってほしいのか、プレゼンの後どんな行動を起こしてもらいたいのか。
プレゼンの目的が「商品の説明をすること」であれば先に記述したプリンターのプレゼン例は良かったのかもしれません。しかし、こちら側が求めていたことは「課題への解決の手段」でした。商品の説明をすることなのか、アイデアを採用してもらうことなのか、それとも自社を単に知ってもらうためにアピールすることなのか。
プレゼンの後、相手に喜んでもらうにはどのような内容がいいのかゴールを明確にしてください。
2)話の土台を整える
プレゼンの目的を設定したあとは話のストーリーを考えます。この際に1)で設定したゴールをブラしてはいけません。
ストーリーの大枠は「①導入→②本編→③まとめ」の3部構成で作ります。
①導入で必要なことは聞き手に対して安心してもらうことです。
プレゼンで商品説明などが突然始まるより、導入でこれから始まるプレゼンの内容に興味をひきよせます。初めて訪れる場でプレゼンするような場合は、自己紹介することもお勧めします。プライベートの話をすることも導入では有効ですが、この後のプレゼンに興味をひきよせる事が目的なのであまりにも業務とかけ離れた話題は避けるようにしましょう。
②本編に入ります。ビジネスにおけるプレゼンでは、結論を先に持ってきます。結論を先に持ってくることで、自分が言いたい事と相手が知りたい事のギャップが修正されます。
聞き手が聞きたいこと(課題)から課題への解決方法を結論として導きます。更に、その結論には根拠が無ければいけません。このロジックツリーの考え方をベースにして、パワーポイントへ打ち込む前にシナリオを考えます。
「この提案がベストです。」「この対策が必要です」と強く主張するのであれば、結論と根拠を結び付けてください。根拠のない結論は単なる思い付きと思われ信憑性に欠けるかもしれません。
③まとめで今回のプレゼンへの評価がされます。どんなに良いプレゼンであっても、まとめで評価を下げてしまうともったいないです。特にこのまとめで重要なことは質疑応答です。質疑応答は質問の内容により柔軟な対応が必要ですが、印象の良い質問の受け取り方は意識しましょう。
まず「ご質問ありがとうございます」と感謝の言葉を伝えるだけで印象は大分変わります。続けて、受けた質問の内容を引用して回答します。「このプリンターで○○という事も出来るのでしょうか?」という質問を受けた場合、「○○に関してですが、・・・・」というように回答します。
質問に答えられない場合は、頭が真っ白になることがあります。その際は気持ちを落ち着かせて「○○に関してですが、社内に持ち帰りまして調べてから後日回答いたします。」というように誠実に対応します。
最後にプレゼンで聞き手に一番伝えたいことを一言添えてプレゼンを締めます。聞き手に届くプレゼンであれば何かアクションをしてくれるはずです。
―おわりに
プレゼンの場面ではつい、いつもより良い自分を「演出」しようとしてしまいます。今回お伝えしたように、重要なことは自分を魅せることではなく、聞き手にメッセージを届け行動に移させることです。
パワーポイントへいきなり書き始めるのではなく、ロジックツリーを参考にして頭の中を整理してからプレゼンに挑むようにします。今回紹介した内容全てを実施することは難しいかもしれませんが、出来る所から始めてみましょう。
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執筆者:島袋 智輝
1980年生まれ。大手日用品メーカーの化粧品事業部所属に所属する傍ら、商品開発コンサルタントとして様々なプロジェクトに携わる。さらに茶道教室の運営、執筆やセミナーの主催、社会人向けうつ病対策団体の設立と幅広い活動をしている複業家。2015年中小企業診断士登録。