6割もの中小企業が「新規顧客・販売先の開拓」に課題を抱えていることが報じられています※。インターネットが普及しWebによる販売促進が当たり前になった昨今でも、決定打となる虎の巻はありません。「お客様の立場で説明しましょう」。そんなノウハウ本が本屋に並びますが、お客様の立場を意識してもなお、新規開拓は難しいものです。一体、「お客様の立場」を正しく捉えるにはどうすればよいのでしょう。
#1:広告業界で注目される「パーセプションモデルフロー」
「お客様の立場」を理解するのに、「パーセプション」という考え方がヒントになります。「パーセプション」とは、近年、広告業界で注目されつつある「パーセプションフローモデル」に基づく考え方で、和訳すると「態度」「意識」「自分の物の見方」という意味。つまり、「パーセプションフロー」とは、お客様の意識が変化する流れのことです。
例えば、みなさんがお持ちのパソコン。存在を知ってから購入するまでの流れを振り返ってみてください。
テレビ広告を見て海外パソコンメーカーAについて知った山田さん。海外と聞き、安かろう悪かろうという意識を持ちました。しかし、ある日、パソコンが故障し、買い替えのため比較サイトを見たところA社パソコンの信頼性は高いことがわかり、壊れにくいという意識に変わります。そして、電気屋に足を運ぶと接客を通じて壊れにくさの割に価格が高くないと意識が変わり、購入に至ります─
この山田さんのお話は架空ですが、すべての購買行動は、この「パーセプション・チェンジ」の連鎖ともいえます。マーケティングに詳しい方は「AIDMAの法則」と似ているとお感じかもしれません。お客様の購買行動には、認知・興味・欲求・記憶・行動のステップがあるという考え方です。
営業活動も広義にはマーケティングの一部。すなわち、パーセプション・チェンジの一ステップであるとも言えます。お客様が、いまどんなパーセプションで、どう変えるのかを意識すると、トークは大きく変わります。
#2:パーセプションの理解から始めよう
パーセプション・チェンジにあたって起点となるのはパーセプションの理解です。例えば、A社パソコンの展示会ブースに来たお客様に訪問アポを取り付ける電話でしたら、現時点でA社のパソコンに対しどんなパーセプションを持っているのかを丁寧に確認します。
・展示会ブースの内容、お客様の名刺、アンケート記載内容を確認する
・お客様の会社情報をホームページで調べる
仮説を持った上で、電話しブースに来た動機や、製品への印象を質問します。「今回ブースでは信頼性の高さを中心に展示していましたが、○○様はパソコンの信頼性に課題をお持ちなのでしょうか?」など会話の中で質問を重ね、どんなパーセプションを持っているかを探ります。
質問を重ねるうちに、例えば太田さんという方は、開発部門の技術者で以前から信頼性の高いA製品のファンで新モデルの信頼性も期待しているというパーセプション、一方の田中さんという方は、情報システム部門でパソコンの故障対応に苦慮する中、偶然A社を知りまだ判断がつかない、といった個々のパーセプションをあぶり出すことができます。
#3:パーセプション・チェンジに集中すれば、自然と双方向のコミュニケーションに
先ほどの例のように、パーセプションは、1人1人異なる可能性があります。その上で、そのお客様の課題解決にA社の商品・サービスが有効であることを印象付け、パーセプションを変化させていきます。
例えば、太田さんは性能に興味がありますから、技術的な特許や性能試験の結果を示しながら、「他社より信頼性が高い→この信頼性の高さはA社の技術でしか実現できない」とパーセプションをチェンジさせれば、「試験結果の詳細は技術者とともに訪問してご説明します」と訪問アポにつながるトークが展開できます。
一方、田中さんは故障対応から解放されることに興味がありますから、故障時のサポート体制や導入実績を示しながら、「A社に対して判断がつかない→A社によって故障対応から解放された企業がたくさんある」とパーセプションをチェンジさせれば、「事例豊富な弊社コンサルタントがヘルプデスク運用のご相談を承ります」と訪問理由を作ることができます。
このように、パーセプション・チェンジとは、お客様の心に「刺さる」ポイントを見極め、心を動かすことで、最終的に購買につなげる活動です。今のパーセプションと、どうパーセプションを変化させるかに集中することで、一方通行ではない双方向のコミュニケーションをすることができます。
さぁ、今日から、商談率を上げるためにパーセプション・チェンジを意識してみましょう。パーセプションの理解にあたって情報収集は不可欠。パーセプションフローは広報、販売、営業、サポート、あらゆる部門が連携して初めて実現します。次世代クラウド販売管理サービス「ウランバ!」で顧客・販売情報の共有を効率よく進めましょう。
※2015年度版 中小企業白書によると、中小企業における収益力向上に向けた課題として約6割の企業が「新規顧客・販売先の開拓」と回答。
執筆者:取材の匠 ライター 渡邉奈月
中小企業診断士・情報処理技術者(システム監査技術者、上級シスアド、情報セキュアド)
通信事業者のマーケティング担当者、プロダクト・マネージャーを経て財務分析業務に従事。最前線でのWebマーケティングの知見を活かし、小規模事業者・中小企業のマーケティング戦略から制作までワンストップで支援。ITやマーケティングをテーマにした書籍、記事の執筆、セミナー登壇も精力的に行う。