モノを作れば売れた高度成長期から半世紀近くたった今日、モノは作ってもなかなか売れない時代になってきました。そのため、世の中には「コレ本当に必要なの?」というモノまであふれかえるようになってきています。一方、この流れに逆らうように、最近では物をなるべく持たないで生活をするライフスタイル(「ミニマルライフ」というらしいです)をとる方々も増えてきています。ほんとうに生活に必要なものだけを持ち、それを活用して生活することによって、身も心も余裕を持った人生を送ろうというもの。たしかに最低限必要なものだけがある空間はスッキリしていて、気持ちがいいですよね。今回はこの「持たない」ことを経営に置き換えて考えてみたいと思います。

#1 経営において「持たない」とは具体的にどういうことか?

一言で「持たない経営」といっても、なんのことかよくわかりませんよね。たとえば、モノを持たないという観点から見ると、必要のない書類はなるべくデータ化して捨てるとか、生産現場でゴミを出さないようにリサイクルを徹底するとか、さまざまなやり方があります。しかしここでは、経営において「持たない」ことを、「資産をなるべく持たない」ことと考えてみます。

資産を持たないとはどういうことでしょうか?ちょっと難しい言い方をすると、貸借対照表の借り方の流動資産や固定資産にあたる部分をなるべく小さくしましょう、ということになります。流動資産は現金や預金など1年以内に動きのあるものですから小さくしたくてもなかなかできません。そこで、固定資産に目を向けてみます。つまり、経営において「持たない」とは、固定資産をなるべく持たないで経営しましょう、ということなのです。

では、具体的にどうやるのでしょうか?

固定資産の中でレンタルやクラウドを活用できるものはそれを活用してしまうのです。たとえば、どの会社でも必要な営業管理システム。SFA(Sales Force Automation)などと言われるシステムです。自社でサーバやソフトウェアを購入していませんか?現在は、「Salesforce.com」などの、クラウドを使ったシステムがあります。パソコンとブラウザ(インターネットエクスプローラやChromeなど)、そしてインターネットへの接続環境さえあれば、いつでもどこでも営業管理システムが使えるのです。クラウドを活用することによって、今まで固定資産として計上していたサーバやソフトウェアが、利用料として費用計上できるようになります。財務的に言うと、貸借対照表の借り方が圧縮されて身軽になるんですね。では、コレで何が嬉しいのかについてご説明します。

 

#2 持たない経営によるメリットと留意点

固定資産として計上しなくてよくなると、貸借対照表全体の総額が小さくなります。固定資産を使って企業活動をしていたときと、資産を持たないで企業活動をしていた時とで同じ売上高を上げたと仮定すると、資産を持たないで企業活動をした時のほうが、総資産回転率(売上高/総資産)が上がります。つまり、より資産を効率的に使って経営をしていると判断できるわけですね。

加えて、売上を生み出す事業用のシステムを自前で抱えていたときには減価償却費が固定費としてかかっていたわけですが、クラウドを活用すると売上高に応じてシステムの規模を拡大縮小できるため、利用料を変動費として計上することができるようになります。固定費額が下がり、変動費率が上がると、利幅は小さくなりますが、売上が減少した際の赤字幅も小さくなります。つまり、景気後退時に強い財務体質を築けるのです。

ただし、費用変動が起きるということは、利益もそれだけ変動するので、事業の成果予測が複雑になります。この点は注意をしておく必要はありますので気をつけてくださいね。

 

複雑な事業の成果予測には、ウランバがお役立ちになれます。売上・販売を一元管理し、経営管理の強化を図ってください。

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執筆者:取材の学校 ライター 中小企業診断士 堀江 賢一

1977年生まれ。福岡県育ち。九州大学大学院理学府修了。中小企業診断士、ファイナンシャルプランナー(AFP)。

大手電機メーカーにてグローバルSCMプロジェクトやインターネットコンテンツ配信システムの販売、事業部改革プロジェクトなどに携わる。システム開発、販売、組織改革と、企業組織活動のあらゆる面を経験。その後コンサルティング企業を経て、現在はインターネット企業で、クラウドの事業戦略やマーケティング戦略の立案と実行に尽力している。戦略と実行計画の立案、プロジェクト推進が得意。

趣味はアカペラとテニス。友人と5人でアカペラユニットを組んでおり、結婚式などで歌を披露している。全日本テニスランキング保持者。