「経営理念は必要なのだろうか」

そう考えている方も多いのではないでしょうか。実際、「理念で飯が食えるか」と言われる経営者にお目にかかることもあります。理念と利益の間には直接的な関係があるように思えませんから、そういう気持ちになるのもわかります。

しかし、本当に経営理念は必要ないのでしょうか。

#1:経営戦略の源泉とは

「戦略は組織に従う」という言葉があります。アメリカの経営学者であるイゴール・アンゾフの言葉で、お聞きになったことがある方もいらっしゃるでしょう。

 

人材が豊富な大企業であれば、新しい戦略を立てるたびに、それに合わせた組織を組み立てることも可能でしょう。しかし、多くの中小企業ではそうはいきません。そのたびごとに組織を再編成できるような人材は抱えてはいないのです。組織が元から持っている文化や風土、力量に応じた戦略しか立てようがありません。自社の状況を無視した経営戦略は机上の空論であり、実行されないまま終わってしまうケースがほとんどでしょう。つまり、「内部の経営資源こそが戦略の源泉である」ことになります。

 

それでは、組織の文化や風土はどこから生まれてくるのでしょうか。それは「経営理念」からだと私は思っています。

 

経営理念とは、その企業が何のために存在するのか、存在意義を明文化したものです。それは創業者の想いを言語化した場合も多いでしょう。

 

こうした「経営理念」を通じて、自社の存在意義を取引先や金融機関、株主などのステークホルダーをはじめとして、広く社会に知ってもらおうとします。と共に、従業員に対しては、行動や判断の指針にしてもらいます。

 

従業員が本当に、経営理念を指針に業務上の判断を繰り返していけば、その理念は文化・風土として組織に定着していくはずです。戦略は組織の文化・風土に影響されます。そして組織の文化・風土は理念によって醸成されます。つまり、戦略は理念に従うのです。理念に基づかない戦略は、長期的に見れば組織に根づくはずがありません。

 

#2:経営理念はなぜ社員に浸透しないのか

しかし「社員に経営理念が浸透していない」と漏らされる経営者の方はあとを絶ちません。会社の入口やオフィス内に理念を掲げる、あるいは社員手帳に明記して配っていたとしても、手応えを感じられないとの話はよく聞きます。では、どうすれば浸透するのでしょうか。

 

朝礼で唱和するのはよく実施される方法です。毎日続けていれば、いつの間にか理解が深まる場合もあるでしょう。また、経営者のみならず、管理職も理念を理解・共有し、自分の部下に繰り返し伝えていくのもひとつの方法です。

 

しかしもっと有効な方法は「言行一致」、すなわち、企業は、理念に沿った施策を打ち続け、それに沿った行動をした社員を称賛し続けていくことだと私は考えています。

 

「三方良し」や「共存共栄」を掲げている企業が、協力会社に対して値下げ要求を繰り返し、自社の利益を確保していたとします。それでは、社内のだれもがその理念を信じようとはしないでしょう。逆に、「地元密着」や「地域貢献」をうたっている企業が、地元のお祭りなどの行事に積極的に関与していたならば、社員は「うちの会社は、本当にこうした取り組みをしていく会社なのだ」と実感できます。このような機会を多く持てば、理解は深まります。理念を体現するような全社的なアクションをやり続けることこそが、理念を共有するためには大事なのです。

 

#3:差別化の源泉は理念から生まれる

中小企業の経営戦略は、「差別化」戦略が基本だといわれます。大型の設備投資に基づく大量生産によってコストを抑える「コストリーダーシップ戦略」は、大企業を前提にしています。中小企業は同じ土俵では闘えません。そうである以上、製品の差別化、市場の差別化が求められます。

 

本来「企業理念」は、ひとつとして同じものはないはずです。そこに込めた創業者や経営者の想いはそれぞれ違う。同じ言葉を使っていても、地域や時代、環境によって違いが出ます。もし全く同じだというならば、別の企業として存続する意味がなくなります。そう考えると、差別化の源泉は「理念」に行き着きます。

 

もちろん、理念だけで差別化された製品やサービスが生まれてくるわけではありません。市場分析をはじめとするマーケティングリサーチは必要不可欠です。しかし、調査結果に引きずられ、もうかりそうだというだけで実行に移すのは危険です。理念を忘れた施策は、短期的な利益を上げることができても、長い目で見れば、組織を破壊し、企業の衰退を招きかねません。長期的な視点で組織を維持し利益を獲得していくためには、経営戦略を経営理念に従わせる必要があるのです。

 

だからこそ「経営戦略は経営理念に従う」と言えるのです。

 

理念に基づく戦略を実行し、販売管理には「ウランバ!!」を活用すれば、効率的に利益を管理することができます。

 

執筆者:取材の学校 ライター 中郡 久雄

昭和40年生まれ。明治大学政治経済学部経済学科卒業。中小企業診断士、和田式陽転エデュケーター、上阪徹のブックライター塾3期生。
新卒で入社した総合建設業(ゼネコン)を皮切りに、宿泊施設の営業職、旅行企画販売、人材派遣業などを経験し、現在は中堅印刷会社の経理担当。基幹システムの再構築や管理会計全般に携わる。モットーは「経理とは経営管理である」。
社外活動では、経営者インタビューを中心に執筆活動に力を入れている。経営者の想いを言葉に変えて、広く伝わるような記事を心掛けている。
最近の趣味は、ライブに行くこと。音楽・芝居は無論、映画もDVDではなく映画館で見るように努めている。