事業を行う上で、資金調達をしたいとき、協力者を得たいとき、メンバーの意思統一を図りたいとき、内外に向けて事業の方向性を伝えるために事業計画書を作成することはとても重要です。ただ、単に売上や費用、利益などの数字を並べるだけでは伝えたいことが伝わらないものです。そこで、事業計画書のあり方について考えていきましょう。

#1: 利益が未来を創る

 

事業計画書を作成するとき、売上、費用、利益、この3つのどこから考えますか?売上を上げるために客数や客単価を上げることから考えたり、費用を抑えるために固定費や変動費を削減することから考えたり、事業計画書を作成するプロセスは一通りではありませんが、利益から考えることが事業計画書の本来のあるべき姿だと考えています。なぜなら、利益が未来を創るからです。

利益があることによって、内部留保できたり、投資できたり、未来に続く強い体質の企業になります。また、税金を多く支払うことができたり、社員に給料を多く支払うことができたり、社会の未来に貢献できます。いくら良い商品やサービスを提供していたとしても、利益を上げられず提供できなくなってしまっては、社会の損失になってしまいます。だから、継続的に社会に貢献できる企業になるために、事業計画書は利益から考えることが重要だと考えているのです。

ここで言う「利益」とは、販売価格から仕入原価を差し引いた粗利益や、本業だけで生み出した営業利益ではなく、金利などの本業以外で発生する経常的な損益も考慮した経常利益のことです。不確実な環境変化などによって左右される部分が大きい臨時的な損益は考慮せず、不確実性を取り除いた経常利益までを考えます。

また、利益から考えて事業計画書を作成することは、未来を考えることですから、経営理念やミッション(使命)を実現するための方向性、ビジョン、戦略がより明確になります。この事業にかける思いを深めてから、戦略、そして戦術を考えることができるのです。売上を上げるために客数や客単価を考えることや、費用を抑えるために固定費や変動費を考えることは、戦術です。まずは、経営理念やミッション、ビジョンや戦略などの上位概念から考えていくことが重要なのです。戦略の誤りを戦術ではカバーできないものです。事業計画書には、どのような未来を創りたいのか、経営者それぞれの“思い”が表れます。それらを具体的に実行できる形に落とし込むのが、事業計画書です。利益から考えることが望ましいと考えられます。

 

#2: 事業計画書の目的は“使う”こと

 

事業計画書は、作ることが目的ではありません。使うことが目的です。金融機関に対して提示をして信用度を高めるため、従業員に対して提示をして従業員たちの士気を高めるためなどに、事業計画書を使うのです。このような事業計画書には、前述の“経営者の思い”に加えて、“数字による根拠”が必要です。 “数字による根拠”と言うと、難しく聞こえるかもしれませんが、簡単に言うと“実績”です。歩んできた経験があれば、必ず積み重ねてきた実績があることでしょう。実績に基づいた事業計画書は、「どのように成長してきて、これからどのように成長していこうとしているのか」を伝えることができるのです。

実績に基づいた事業計画書を作成するためのひとつの方法として「月次決算」を行うことが考えられます。税法や会社法などの法律にもとづく決算は年に1回行えば、事足りますが、「月次決算」を行うと、最新の経営状態をつかみ、タイムリーに対策を講じることができます。このことで迅速で柔軟な対応も可能になります。正確性と、迅速性、柔軟性、透明性を持って、この実績の積み重ねを行うことが、内外に伝わりやすい事業計画書につながるのです。利益から未来を思い描いて、過去の実績から説得力の溢れた事業計画書を作成して、使いまくりましょう。

月次決算、予実管理を行い、ビジョンを実現するために、販売管理クラウドサービス「ウランバ!!」を活用してみてはいかがでしょう。

 

執筆者:取材の匠 ライター 梅津勝明

1972年生まれ。大阪大学基礎工学部物性物理工学科卒業。中小企業診断士。

誰もが志を持ちやすく育みやすい社会の実現を目指して活動している。中小企業診断士として、経営理念作成支援、事業計画作成支援、組織改善支援、起業家教育、中小企業診断士受験生支援、取材執筆等を行う。また、影絵師として、小学校や保育所等で影絵劇ワークショップを開催し、自分で感じ自分で考えることの大切さを伝えている。